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鶏(全ての辞書)
★1.鶏が鳴いて、岩屋戸や地底にこもった太陽を招く。
『古事記』上巻 太陽神アマテラスが、弟スサノヲの乱暴なふるまいを見て恐れ、天の岩屋戸にこもってしまった。
そのため、高天の原も葦原の中つ国も暗闇となり、いつまでも夜が続く。
八百万(やほよろづ)の神々は、天の安の河原で会議を開いて、アマテラスを岩屋戸から出す方法を相談し、常世の国の長鳴鳥を集めて鳴かせた→〔扉〕1。
『太陽とオンドリ』(インドの昔話) 「太陽の光がまぶしい」と人間たちが文句を言うので、太陽は怒って地底の国にこもってしまった。
オンドリが地底の国へ行き、太陽に「地上に出てほしい」と頼むが、断られる。
オンドリはあきらめて地上へ帰ろうとして、「途中で猫に襲われるのが心配だ」と言う。
太陽は、「呼んだら助けに行ってやる」と約束する。
オンドリは帰り道で、猫もいないのに大声で鳴く。
その声を聞いて、太陽は地上へ出て来る。
その時以来、オンドリはずっと同じやり方を守っている。
今でも、オンドリが鳴くと、太陽は姿を現すのだ(少数民族ナガ族)。
*鶏が鳴いて朝になったので、鬼が逃げ去る→〔笛〕4の『神道集』巻4-18「諏訪大明神の五月会の事」。
★2.鶏を夜明け前に鳴かせ、朝だと思わせる。
『好色一代男』巻2「旅のでき心」 18歳の世之介は、駿河国・江尻の宿で若狭・若松という姉妹の遊女になじみ、2人を身請けした。
姉妹は世之介に、「遊女の客あしらいとして、鶏のとまり竹に湯をしかけて夜明け前に鳴かせ、客を早く起こして追い出すことをした」などの話を聞かせた。
『菅原伝授手習鑑』2段目「道明寺」 藤原時平に味方する土師兵衛・直禰太郎父子が、鶏のとまり竹の中に熱湯を流しこみ、暖気で夜明け前に鶏を鳴かせて、菅原道真をおびき出し暗殺しようとたくらむ。
しかし立田(=直禰太郎の妻)が計略を立ち聞きしたので彼女を殺して池に沈め、別の方法で鶏を鳴かせることにする→〔鳥の教え〕4。
妖怪と刀鍛冶の伝説 刀鍛冶が妖怪に、「百本(あるいは千本)の刀を一晩で作ったら娘の婿にしてやる」と約束する。
妖怪は次々と刀を作るが、あと1本というところで、刀鍛冶は、とまり木に湯を通す・湯をかけるなどして鶏を鳴かせ、妖怪を退散させる(徳島県海部郡)。
★3.人間が鶏の鳴きまねをする。
男鹿のナマハゲの伝説 昔、漢の武帝が5匹の鬼を連れて、男鹿の本山(ほんざん)に渡って来た。
村人は「一夜のうちに、本山まで千段の石段を作ったら、村娘を毎年人身御供にささげよう。
できなければ村里へ降りて来るな」と、鬼に言う。
鬼の仕事は速く、夜明けまでに石段が完成しそうなので、村人の1人が鶏の鳴き声をまねて、鬼をだます。
鬼は約束を守って、本山から降りて来なくなった。
この鬼たちが、ナマハゲの先祖だという(秋田県男鹿半島)。
『史記』「孟嘗君列伝」第15 孟嘗君一行は、函谷関をぬけて秦国を脱出しようとするが、まだ夜中で関所が開かない。
そこで食客の1人が鶏の鳴き真似をすると、あたりの鶏もつられて鳴き出す。
関所の番人は「朝だ」と思って、孟嘗君一行を通した。
*爺が鶏の鳴き真似をして、鬼を脅す→〔隣の爺〕1の『地蔵浄土』(昔話)。
*あまのじゃくが鶏の鳴き真似をする→〔あまのじゃく〕1。
★4.朝鳴くべき鶏が、夜に鳴く。
『鶏と踊子』(川端康成) 鶏が夜鳴くのは不吉だ。
夜鳴きする鶏は、浅草の観音さまの所へ棄てれば、禍(わざわい)を免れるという。
夜、踊子が鶏を風呂敷に包んで棄てに行くと、変な男がつきまとう。
男は「踊子たちに恋文をよこす男どもを恐喝して、一緒に金もうけしないか?」と誘い、踊子をつかまえる。
踊子は風呂敷包みを男の顔に押しつけ、男がひるむ隙に逃げ帰る。
鶏のおかげで禍を免れたのだ。
★5a.黄金製の鶏。
『奇談異聞辞典』(柴田宵曲)「黄金の鶏」 仙台の御城下遠からぬ村里に、庭鳥坂がある。
夜更けに往来する人が、折々鶏の声を聞くので、この名がついた。
用水工事のために、この坂を掘ったところ、石棺が出てきて、中に黄金製の大きな鶏が2羽あった。
その腹に、1つは「山」という文字が楷書で、1つは「神」という文字が草書で、彫ってあった(『我衣』19巻本・巻13)。
★5b.金鶏の声。
金鶏山の伝説 中蓮寺の峯に金の鶏が住んでおり、「鳴き声を聞いた者は、その年は幸福が巡って来る」と言われた。
里人は、金の鶏の鳴き声を聞こうと競って早起きをするようになり、自然と早起きの習慣が生まれた(香川県三豊郡財田町)。
金鶏の伝説 福山の頂上の柊の根もとに金の鶏が埋まっており、正月元日の未明に3声鳴く。
それを聞くと幸福になるので、太郎と次郎が聞きに行く。
太郎は1声、次郎は2声聞くが、ともに死んでしまう。
結局3声聞かなければ幸福になれないというので、皆恐ろしがって聞きに行かなくなった(岡山県都窪郡山手村福山)。
★6.鶏石の声。
鶏石(高木敏雄『日本伝説集』第5) 紀伊国那賀郡粉河町、丹生大明神の社殿の石階の下近くに、鶏石がある(*→〔風〕2a)。
毎年正月元日には、この鶏が1声高く啼いて石階を登る。
その声を聞く人は、長生きするという。
*軍鶏(しゃも)が人を襲う→〔鳥〕7bの『半七捕物帳』(岡本綺堂)「大森の鶏」。
『古事記』上巻 太陽神アマテラスが、弟スサノヲの乱暴なふるまいを見て恐れ、天の岩屋戸にこもってしまった。
そのため、高天の原も葦原の中つ国も暗闇となり、いつまでも夜が続く。
八百万(やほよろづ)の神々は、天の安の河原で会議を開いて、アマテラスを岩屋戸から出す方法を相談し、常世の国の長鳴鳥を集めて鳴かせた→〔扉〕1。
『太陽とオンドリ』(インドの昔話) 「太陽の光がまぶしい」と人間たちが文句を言うので、太陽は怒って地底の国にこもってしまった。
オンドリが地底の国へ行き、太陽に「地上に出てほしい」と頼むが、断られる。
オンドリはあきらめて地上へ帰ろうとして、「途中で猫に襲われるのが心配だ」と言う。
太陽は、「呼んだら助けに行ってやる」と約束する。
オンドリは帰り道で、猫もいないのに大声で鳴く。
その声を聞いて、太陽は地上へ出て来る。
その時以来、オンドリはずっと同じやり方を守っている。
今でも、オンドリが鳴くと、太陽は姿を現すのだ(少数民族ナガ族)。
*鶏が鳴いて朝になったので、鬼が逃げ去る→〔笛〕4の『神道集』巻4-18「諏訪大明神の五月会の事」。
★2.鶏を夜明け前に鳴かせ、朝だと思わせる。
『好色一代男』巻2「旅のでき心」 18歳の世之介は、駿河国・江尻の宿で若狭・若松という姉妹の遊女になじみ、2人を身請けした。
姉妹は世之介に、「遊女の客あしらいとして、鶏のとまり竹に湯をしかけて夜明け前に鳴かせ、客を早く起こして追い出すことをした」などの話を聞かせた。
『菅原伝授手習鑑』2段目「道明寺」 藤原時平に味方する土師兵衛・直禰太郎父子が、鶏のとまり竹の中に熱湯を流しこみ、暖気で夜明け前に鶏を鳴かせて、菅原道真をおびき出し暗殺しようとたくらむ。
しかし立田(=直禰太郎の妻)が計略を立ち聞きしたので彼女を殺して池に沈め、別の方法で鶏を鳴かせることにする→〔鳥の教え〕4。
妖怪と刀鍛冶の伝説 刀鍛冶が妖怪に、「百本(あるいは千本)の刀を一晩で作ったら娘の婿にしてやる」と約束する。
妖怪は次々と刀を作るが、あと1本というところで、刀鍛冶は、とまり木に湯を通す・湯をかけるなどして鶏を鳴かせ、妖怪を退散させる(徳島県海部郡)。
★3.人間が鶏の鳴きまねをする。
男鹿のナマハゲの伝説 昔、漢の武帝が5匹の鬼を連れて、男鹿の本山(ほんざん)に渡って来た。
村人は「一夜のうちに、本山まで千段の石段を作ったら、村娘を毎年人身御供にささげよう。
できなければ村里へ降りて来るな」と、鬼に言う。
鬼の仕事は速く、夜明けまでに石段が完成しそうなので、村人の1人が鶏の鳴き声をまねて、鬼をだます。
鬼は約束を守って、本山から降りて来なくなった。
この鬼たちが、ナマハゲの先祖だという(秋田県男鹿半島)。
『史記』「孟嘗君列伝」第15 孟嘗君一行は、函谷関をぬけて秦国を脱出しようとするが、まだ夜中で関所が開かない。
そこで食客の1人が鶏の鳴き真似をすると、あたりの鶏もつられて鳴き出す。
関所の番人は「朝だ」と思って、孟嘗君一行を通した。
*爺が鶏の鳴き真似をして、鬼を脅す→〔隣の爺〕1の『地蔵浄土』(昔話)。
*あまのじゃくが鶏の鳴き真似をする→〔あまのじゃく〕1。
★4.朝鳴くべき鶏が、夜に鳴く。
『鶏と踊子』(川端康成) 鶏が夜鳴くのは不吉だ。
夜鳴きする鶏は、浅草の観音さまの所へ棄てれば、禍(わざわい)を免れるという。
夜、踊子が鶏を風呂敷に包んで棄てに行くと、変な男がつきまとう。
男は「踊子たちに恋文をよこす男どもを恐喝して、一緒に金もうけしないか?」と誘い、踊子をつかまえる。
踊子は風呂敷包みを男の顔に押しつけ、男がひるむ隙に逃げ帰る。
鶏のおかげで禍を免れたのだ。
★5a.黄金製の鶏。
『奇談異聞辞典』(柴田宵曲)「黄金の鶏」 仙台の御城下遠からぬ村里に、庭鳥坂がある。
夜更けに往来する人が、折々鶏の声を聞くので、この名がついた。
用水工事のために、この坂を掘ったところ、石棺が出てきて、中に黄金製の大きな鶏が2羽あった。
その腹に、1つは「山」という文字が楷書で、1つは「神」という文字が草書で、彫ってあった(『我衣』19巻本・巻13)。
★5b.金鶏の声。
金鶏山の伝説 中蓮寺の峯に金の鶏が住んでおり、「鳴き声を聞いた者は、その年は幸福が巡って来る」と言われた。
里人は、金の鶏の鳴き声を聞こうと競って早起きをするようになり、自然と早起きの習慣が生まれた(香川県三豊郡財田町)。
金鶏の伝説 福山の頂上の柊の根もとに金の鶏が埋まっており、正月元日の未明に3声鳴く。
それを聞くと幸福になるので、太郎と次郎が聞きに行く。
太郎は1声、次郎は2声聞くが、ともに死んでしまう。
結局3声聞かなければ幸福になれないというので、皆恐ろしがって聞きに行かなくなった(岡山県都窪郡山手村福山)。
★6.鶏石の声。
鶏石(高木敏雄『日本伝説集』第5) 紀伊国那賀郡粉河町、丹生大明神の社殿の石階の下近くに、鶏石がある(*→〔風〕2a)。
毎年正月元日には、この鶏が1声高く啼いて石階を登る。
その声を聞く人は、長生きするという。
*軍鶏(しゃも)が人を襲う→〔鳥〕7bの『半七捕物帳』(岡本綺堂)「大森の鶏」。